遺伝でワキガ体質になるって本当?その確率と簡単セルフチェック・対処法
大陸と陸続きだった頃、日本列島にたどり着いた縄文人はワキガ体質でした。ワキガ体質は遺伝により引き継がれることから縄文人の遺伝が強いほどワキガ体質になりやすいと言われています。しかし、ワキガ体質だからと諦める必要はありません。ワキガ体質の原因を知り、気になるワキガのニオイを抑えましょう。
2018年11月19日更新
記事の目次
[1] ワキガとは?
ワキガとは、脇の下のニオイで腋臭症とも呼ばれています。脇の下や乳首などのアポクリン腺から分泌される汗にはタンパク質や鉄分が含まれています。嗅ぎなれたニオイには慣れてしまうことから鈍感になっていたり、緊張性の汗のニオイだと思って気づかなかったりと自己判断は難しいものです。
ワキガはタンパク質や脂質、鉄分などの成分が菌によって分解され、ツンと鼻を突き抜けるよう独特のニオイを発生させます。人種や個人によってアポクリン腺の数や量は大きく異なることから、決して病気ではなくあくまで体質的なものによる症状です。
日本人は清潔志向とも言われ、他の人種に比べてニオイを不潔と扱う傾向にあります。
ここではワキガの原因ともなるアポクリン腺についてご説明いたします。
ワキガはアポクリン腺が多い人ほどなりやすい
アポクリン腺は耳や脇、デリケートゾーンにかけて特定の部分だけに存在し、思春期に向けて活発に発達するのが特徴です。人間が猿人だったころには体毛が身体を覆い、アポクリン腺も多く存在し、また、繁殖するためのフェロモンとして分泌されていました。しかし、進化と共に体毛も減り、アポクリン腺は現在の特定部位だけに存在するようになったとされています。
アポクリン腺が成熟する時期に活発化し、思春期を越えて増えることがないのは、異性を惹き付けるフェロモンの名残だと考えられます。アポクリン腺の多い人ほどワキガになりやすいのも特徴で、決して病気ではなく、あくまで体質的なものによる症状です。
ここではアポクリン腺から分泌される汗の特徴と、菌について詳しくご説明いたします。
・ワキガの原因となる汗とは?
このアポクリン腺から出てくる汗には、脂質やタンパク質などが多く含まれており、白く濁っています。粘り気があるのも特徴で、皮膚表面に残りやすく微生物の作用を受けやすいのも特徴です。耳の中や脇の下、乳首に陰部と耳からデリケートゾーンにかけての体毛部分に存在します。体温調節の汗とは異なり、常に微量ずつ発汗しているのも特徴です。
一方、エクリン腺から出てくる汗は、成分のほとんどが水分でサラサラとしています。暑い季節や運動した時などの汗はエクリン腺から出ています。多汗症の場合、汗の量が多いため細菌で分解される量も多く、ワキガと間違われやすいのも特徴です。
・ワキガの原因となる菌とは?
エクリン腺から出る汗もアポクリン腺から出る汗も、汗自体はほぼ無臭です。しかし、時間の経過に伴って皮膚常在菌の影響を受けて酸化、分解されてニオイが発生します。
※写真はイメージです。
エクリン腺の場合には汗臭いニオイになり、アポクリン腺の場合には鉛筆の芯のようなニオイに例えられます。ワキガの原因となる汗には、タンパク質や脂質などの栄養分が多く、蒸れやすい環境からも菌に好まれやすい状態と言えます。
アポクリン腺は思春期から活発になる
思春期は人からどう見られているかについて敏感になりやすく、ワキガの悩みを抱えやすい時期でもあります。思春期は第2成長期と言われ、心身ともに成長し変化します。アポクリン腺も急速に発育し始め、思春期にはニキビが増えるように、アポクリン腺から出るワキガの成分も盛んになります。
思春期を過ぎると性ホルモンも落ち着くことからワキガの症状が気にならなくなるケースもあるようです。特に女性の場合には、妊娠・出産を経験すると緩和されたと実感される方も多いのだとか。
[2] 4つの項目でワキガを確認できる簡単なセルフチェック
いつも嗅いでいるニオイは鈍感になりやすく、自分でワキガ体質なのか気づきにくい可能性もあります。次の3つの項目で、ワキガ体質かどうかを自分で簡単に調べることができます。自分がワキガ体質かどうか不安になったら、診察を受ける前にセルフチェックしてみましょう。
家族や親戚にワキガ体質の人がいる
ワキガ体質は遺伝によるもので、家族や親戚にワキガ体質の方がいる場合には自分もワキガ体質の可能性が高くなります。
衣類にくっきりとした黄ばみがある
一般的につく汗ジミの黄ばみは、全体的に薄っすらとしているのが特徴です。汗の出やすい首周りや脇周りを中心に薄っすらとボヤけるように広がります。
ワキガが原因の黄ばみの場合には、脇を中心に黄ばみがはっきりと分かれるのが特徴です。この黄ばみがある場合はワキガの可能性があります。
脇毛に白い結晶がついている
脇毛に付着する白い粉やオレンジ色の塊は、毛穴から出てくる分泌物の結晶です。一度付着すると体を洗うだけでは取り除くことが困難です。脇の毛を剃ることで新しい毛に生え変わります。次に生えてきた脇毛にも分泌物の結晶が見られる場合には、繰り返し処理することで改善することができます。
汗をよくかく場合や不衛生にしている場合にはオレンジ色の塊となる場合があります。この場合にはワキガによる原因の場合が高いので外用薬で改善することが可能です。
耳垢が湿って柔らかい
脇のアポクリン腺が多い場合、耳のアポクリン腺も比例して多い場合が高いです。耳にアポクリン腺が多い人は、分泌される汗により湿りやすい環境となります。ワキガの方の多くは耳垢が湿っており、オレンジ色のような耳垢の場合にはワキガ体質の可能性が高くなります。
綿棒では取れないが、指を入れると爪の間に湿った耳垢が残る場合もあるようなので、自分に合った方法でチェックしましょう。
[3] ワキガが遺伝する確率とは?
ワキガ体質になる遺伝子は、生まれてくる子どもに受け継がれやすく、アポクリン腺の多い遺伝子の場合には、その特徴を引き継ぐ可能性が高いと言えます。ワキガの遺伝は後発のものではなく生まれ持つ個性なので防ぐ方法は現在のところありません。そして、ワキガ体質は遺伝によるもので、何かをきっかけに伝染することはありません。
ここではワキガ体質の遺伝条件についてご説明いたします。
両親がワキガの場合と片親がワキガの場合の遺伝確率
・両親がワキガの場合
両親ががワキガの場合、80%の確率で遺伝子の特徴を引き継ぐ可能性があります。ワキガの遺伝子は優性遺伝で、優先的に子どもが受け継ぐので、両親がワキガの場合には高い確率で引き継ぐ可能性があります。
・片親がワキガの場合
片親がワキガの場合、50%の確率で遺伝子の特徴を持って生まれる可能性が高くなります。
縄文人の遺伝子が強いほどワキガになりやすい
大昔の日本は2種類の人種に分かれていました。まだ大陸と陸続きだった頃、日本列島にたどり着いた縄文人は古モンゴロイドと呼ばれ、耳垢は湿っており、ワキガの原因となるアポクリン腺も多い特徴がありました。海を渡って日本列島にたどり着いた弥生人は新モンゴロイドと呼ばれ、耳垢は乾燥しており、ワキガの原因となるアポクリン腺は少ない特徴があります。
世界の人種で見ると、日本人は10%前後がワキガだと言われています。中国や韓国になると5%と少なくなっております。逆に黒人は100%がワキガであり、欧米人は80%となっています。
血液型とワキガの因果関係は無い
ワキガは食生活と遺伝により受け継がれ、アポクリン腺から出る分泌量の違いによってワキガであるかが決まります。血液型によってワキガに違いがあるといった因果関係はまったくのデタラメです。血液型で分類する文化は日本発祥のもので、その影響を受けた韓国・台湾など特定地域に広まったと考えられます。
生活習慣や食生活の乱れにが原因によってワキガのニオイが強くなる場合は考えられます。睡眠不足によりホルモンバランスが崩れることでニオイが強くなるとも言われ、不規則な生活との因果関係はあるとされています。その他にも、脂物を多く摂取する欧米はワキガも多いことから、食生活もワキガと関係性が高いとされています。
[4] 日常生活で出来るワキガ対策とは?
脇汗をこまめに拭く
汗臭いニオイもワキガのニオイも汗が菌により分解されることで発生します。汗が分解される前に拭き取り、脇の環境を清潔に保つことはワキガ対策にもっとも有効的な方法です。
殺菌効果のあるシートを使うのも効果的ですが、しっかり乾かすことも重要です。しっとりしたままでは、菌が繁殖しやすい環境となるので注意が必要です。
脇毛を清潔に保つ
脇毛がある状態では蒸れやすく、菌も繁殖しやすい環境と言えます。脇毛に付着したオレンジ色の塊は爪で引っ掻いた強さでも落ちることはなく、強いニオイの原因ともなります。剃ることができない場合には、長さを調節できるアタッチメントを付けたシェーバーを使って短く整えましょう。シェーバーがない場合にはすきバサミを使うのも有効です。
毛穴から出る不純物を抑える
動物性の脂質の多いものは毛穴から出る不純物の量を増やします。肉やバターにチーズなど脂質の多い食事の摂取量には特に注意しましょう。
逆に意識的に摂取することでワキガのニオイを和らげることのできる食べ物もあります。植物性のオリーブオイルやゴマ油、ヒジキやワカメにメカブなどです。その他にも緑茶や酢も効果が期待できます。特に和食には刺激物を使った料理が少なく、ニオイを和らげる効果のある食材を多く使うので、ニオイを気にしている人に向いている食べ物としておすすめです。
[5] 3mm程度の切開でワキガか見て診断できる
これまではワキガを判断する場合、多くの病院でガーゼを使用した検査を行っていました。脇に挟んだガーゼを嗅ぐことで診断します。自己臭症の場合、ニオイを嗅ぐことで判断する原始的な手法では納得されることが少なく、試験切開という手法を使うことで、アポクリン腺を目で見て確認することが効果的です。
強いワキガの場合には、イクラ状のアポクリン腺が数珠つなぎに確認できます。粘り気のある状態や黒い色の場合にワキガと判断できます。
ワキガの治療選びのコツとは?
ワキガの治療をおこなう上で、どのような手術を選べばよいか判断に迷うこともあるでしょう。そんな時に気をつける点は、ずばり良質なコミュニケーションが取れるかどうかです。どんなに腕のよい医師であっても相性が悪いと後々の不満に繋がります。治療法と合わせて患者目線でカウンセリングが行われているかチェックすると良いでしょう。
その他にもアフターケアがしっかり行われているかも重要です。
保険治療
ワキガの治療法の中でも健康保険が適用されて手術費用を抑えることができるメリットがあります。
・皮弁法(ひべんほう)
皮弁法の手術とは、直視下摘除法や剪除法とも呼ばれ、脇に5cm程度の切開を入れて目視しながらアポクリン腺を除去する手術法です。手術後は絶対安静となり、脇と肩をたすき掛けのように圧迫固定した状態での生活となります。腕をあげたり重いものを持ち上げたりもできません。1週間は絶対安静となるため、学校やお勤めの方は長期休暇のとれるタイミングでの手術がおすすめです。
切らない治療
ワキガの治療には切らなくても治せる手術が存在します。お子さんが小さな場合に検討しやすいメリットがあります。しかし、すべての体質に効果があるという訳ではなく、治療を受けると半分程度に軽減できると考えた方が自然かもしれません。
・ミラドライ
ミラドライの治療法とは、マイクロウェーブの電磁波を皮下に照射することでアポクリン腺の機能を破壊する治療法です。血管や神経を傷つけないので安心して治療を受けられる特徴があります。治療してから回復するまでの時間は短く、その日から日常生活は送れるようになります。
自費治療
・クワドラカット法
クワドラカット法の手術とは、脇の両端に4mm程度の切開で行います。皮弁法などに比べても傷口は非常に小さく、再発も少ない手術です。切開した穴にシェーバーを挿入し、汗腺を均一に取り除きます。皮弁法と同じく手術後は絶対安静となり、脇と肩をたすき掛けのように圧迫固定した状態での生活となります。腕をあげたり重いものを持ち上げたりもできません。1週間は絶対安静となるため、学校やお勤めの方は長期休暇のとれるタイミングでの手術がおすすめです。
・超音波治療
超音波法とは、皮膚を3cm程度切開してアポクリン腺を含めた皮下組織を熱で焼いて破壊する手術です。熱により破壊する手術のために皮膚の薄い方に不向きです。脇毛を残すことのできる特徴があります。
[6] 多汗症とは?
ワキガと間違えられやすい多汗症は、エクリン腺から出る汗の異常です。全身に大量の汗を出す全身性多汗症と、一部で大量の汗を出す局所性多汗症に分かれます。局所性多汗症は手のひらや足の裏、脇や頭から大量の汗が出ます。緊張性の汗はニオイも強く、多量の汗が分解されることで強いニオイを発生させます。
脇にたくさんの汗でワキガとは言わない
暑いわけでもないのに多量の汗をかいてしまう人ほど、多量の汗=ワキガと勘違いしやすくもあります。体温をコントロールする温熱性発汗や人前に立つことで出る精神性発汗は、普段の汗よりも刺激臭が強く、ワキガと勘違いしやすいのが特徴です。
多汗症とは緊張により交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで多量の汗が出る症状です。デオドラントなどで汗を抑えることで刺激臭を抑えることができます。気にしすぎることでより緊張し、多量の汗が出てしまうことから、リラックスできる環境を整えることも重要です。
[7] デリケートな問題だからこそまずは相談
お子さんが小さい場合や気になって相談できない場合には、専門医を受診することをおすすめいたします。特にワキガはデリケートな問題で、友達に相談することも困難です。自分が納得できるまでカウンセリングを受けることが大切です。皮膚科、美容皮膚科、美容外科などいくつかピックアップしておきましょう。